2006 年 19 巻 2 号 p. 128-138
熱帯を気候学的に区分する際,東南アジア熱帯雨林地域は乾季がない年中多雨な地域とみなされ,降雨量の季節変動が不明瞭とされてきた.しかし最近の研究成果から,東南アジア熱帯雨林地域においても,降雨量に明瞭な季節変動が存在し,そのパターンは空間的に多様であることが分かってきた.本研究では,ボルネオ島マレーシア・サラワク州を対象とし,17地点において41年間にわたり観測された日降雨量データセットを用いて降雨季節変動パターンとその空間分布特性を把握し,降雨季節変動を指標とした気候学的地域区分を試みた.2種類の分類基準を設けた結果,17地点は5パターンに分類された.得られた季節変動パターンから,1年を5つの季節に区分し,それぞれの季節における各グループの降雨量変動の特徴について検討した.