水文・水資源学会誌
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原著論文
小流域での流出2次ピークの生成についての数値実験
白木 克繁
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2006 年 19 巻 4 号 p. 258-266

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抄録

流出2次ピーク形成についての浸透数値実験を行った.数値実験は東京大学愛知演習林の南谷谷頭部流域(0.45 ha)を対象に,簡便化した飽和不飽和3次元浸透計算法を用いて行った.表層土層の水理特性はサンプル試験より決定し,基岩の水理特性は観測された流出量,地下水位変化を再現するように決定した.数値実験の結果,鉛直方向に透水性が変化しないか,透水性の高い領域が支配的であるときに流出2次ピークが発生することが分かった.透水係数を変化させた結果,2次ピーク流量は,透水係数が大きいほど大きいが,2次ピーク発生時刻に大きな変化は生じないことが分かった.また,流出2次ピークは透水性の高い領域が土層上部にあり透水性の低い領域が土層下部にある時に発生しにくいことが分かった.このため,基岩への浸透があるが,基岩の透水性が比較的低いなどといった条件では,基岩浸透に流出2次ピーク発生を抑制する機能があるといえる.また,土層厚または土壌水が浸透する基岩層の厚さが厚いほど基底流出の平準化機能は大きくなった.これらの結果より,解析対象とした流域での物理的条件と流出2次ピークの発生についての関連を例示することができた.

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© 2006 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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