水文・水資源学会誌
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解説
安定同位体を用いた流域生態系における窒素循環研究の可能性について
解説シリーズ「流域の水・物質循環とそれを保全・管理するための水文学・生態学的視点」
木庭 啓介眞壁 明子
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2006 年 19 巻 4 号 p. 293-301

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抄録

河川生態系における窒素循環については様々な形で研究がなされてきている.その中でも,窒素安定同位体比(δ15N値)は,富栄養化の進行具合を表すパラメーターとして,近年盛んに用いられるようになってきた.しかし,定量的な議論を実現するためには,多くの前提条件について詳細な検討が必要である.実際の研究においては,単純に人為起源窒素化合物と天然起源化合物のエンドメンバーを決定することは難しく,それぞれの生態系の特徴に応じて天然起源化合物が示すδ15N値の変動を加味した上で,人為起源の影響を査定することが重要であると考えられる.そこで本解説では,生態系の一次生産者のδ15N値を決定する要因として重要であり,農業活動など,人間活動に応じて素早く反応していると思われる,溶存窒素化合物のδ15N値の決定要因について,既存のデータをまとめ,δ15N値を用いた窒素循環研究における注意点と今後の展望について議論した.

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© 2006 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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