水文・水資源学会誌
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酸素安定同位体分析によるハードパン破砕土壌に植林された樹木の水源深度の推定
塩野 克宏安部 征雄河原崎 里子濱野 裕之田内 裕之小島 紀徳山田 興一
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2007 年 20 巻 5 号 p. 409-423

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抄録

ハードパン破砕を伴った植林法のための適種選抜はハードパンが分布する乾燥地での植林の成功に重要である.ハードパン破砕による成長改善には種間差があり,Eucalyptus camaldulensisで改善されるが,Acacia aneuraでは改善されない.この原因として,ハードパン破砕により土壌水分状態が改善された深い土層を水源とする能力の種間差が予想されていた.本研究では,ハードパン破砕区と非破砕区(自然状態)における灌漑前後の深度別の土壌体積含水率の測定と,土壌と植林木からの抽出水,灌漑水および井戸水の酸素安定同位体比の分析により,2樹種の主な水源の深さを推定した.非破砕区では両樹種ともに厚いハードパン層のある深度20 cmよりも浅い土層を主な水源としており,灌漑前のこの土層は乾燥していた.一方,灌漑前にも破砕区の深度100 cmより深い土層は湿潤状態にあった.破砕区のE.camaldulensisはこの深度100 cmよりも深い土層の水を主な水源としていた.しかし,A.aneuraは破砕区でも深度100 cmより浅い土層を主な水源としており,深い土層の水を有効に利用できていなかった.本研究により深い土層(>100 cm)の水を主な水源として利用できる樹種はハードパン破砕により成長改善されることが推察できた.

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© 2007 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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