水文・水資源学会誌
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管理型最終処分場が流域水循環に及ぼす影響に関する基礎的研究
藤本 雄大田中 基弘手計 太一平野 文昭松藤 康司
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2007 年 20 巻 6 号 p. 530-538

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抄録

近年,森林破壊,灌漑面積の増加,ダム貯水池の建設,都市化などによって,河川水の質,量ともに,大きく変化している.このような社会変動と水循環の相互作用の関係については未解明な部分が多い.その要因の一つとして,把握しきれていない人間活動の存在が挙げられる.本研究では,福岡県西部に位置する瑞梅寺川流域と福岡市西部最終処分場を対象として,管理型最終処分場が流域水循環に与える影響を明らかにするための基礎的な検討を行った.
その結果,最終処分場に因る水量の人為的な操作によって,自然の河川流況に影響を与えていることを示唆した.また,最終処分場への降雨が河川に戻る時間遅れは,最終処分場の埋立地や汚水処理場での滞留によって生じていることを明らかにした.特に大雨時や降雨が連続した場合において,最大放流量の緩和および河川への放流の時間遅れが顕著であることを示した.
世界規模で廃棄物発生量は増加しており,一部の地域や国では最終処分場が巨大化している.そのため,最終処分場が流域水循環へ与える影響の評価は今後も重要な検討課題と考えられる.

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© 2007 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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