乾燥地における大規模植林による炭素固定のための技術確立が求められている.乾燥地に降る貴重な降雨を有効に利用するために,不透水層破壊による土壌構造改善技術の導入,および土盛りによる堰(Bank)を築いた西オーストラリア州レオノラ近郊を対象とした植林実証試験が行われている.
本研究では,集水技術導入による塩類の供給,蓄積の変化に焦点をあて,Bank内の土壌および雨水,表面流出水,灌水の化学性評価から,集水に伴う塩類集積状況の把握を行った. Bank造成および植林開始から5年経過時点では塩害発生には至っていないが,Bank外と比べ中では電気伝導度,水溶性イオン濃度共に高く,ゆっくりとではあるが蓄積していることが示唆された.
また,元素ごとに供給源の水を特定した.Na,Ca,Mgは主に灌水より供給されており,灌水の供給を止めた現在以降は蓄積の恐れが無いと期待された.一方,植物必須元素であるK,Pは,主に雨水より供給されている.土壌の化学分析の結果からも根域での濃度が裸地部と比べ高く,リターや樹幹流による土壌への還元があると考えられる.