水文・水資源学会誌
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原著論文
塩化物イオンの物質収支を用いた新第三紀層山地小流域における深部地下水浸透量の推定
小田 智基浅野 友子鈴木 雅一
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2008 年 21 巻 3 号 p. 195-204

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抄録

近年,岩盤に浸透する水が山地流域における流出や水質形成に影響することが報告されており,岩盤に浸透する水の量が無視できない流域があることが明らかになっている.本研究では,直接測定することが困難である流域末端で堰堤を通過せずに岩盤深部に浸透し,流域外へ抜ける水の量(深部地下水浸透量)を,Clの物質収支を用いて推定した.対象としたのは,これまで深部地下水浸透量が推定された例の乏しい新第三紀層の山地小流域(1ha)である.樹冠通過雨,樹幹流下雨,降雨時,無降雨時の渓流水,地下水のCl濃度観測結果に基づき,Clの物質収支を算出することにより,深部地下水浸透量を推定した.その結果,深部地下水浸透量は410 mm/yr から640 mm/yr,平均で520 mm/yrであり,年平均降水量の22 %と推定された.また,森林においてClの物質収支を用いる場合,樹冠通過雨,樹幹流下雨によるCl流入量を考慮する必要があること,洪水流出中のCl濃度変化を考慮する必要があることが示された.

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© 2008 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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