2008 年 21 巻 5 号 p. 361-367
東北タイ天水圃場での水資源確保を目的に,誘電率法の一種であるProfile Probe土壌水分センサー(PR1)を用いて土壌水分調査を行った.PR1を用いて土壌水分量を測定するためには,PR1の出力電圧と体積含水率の実測値との校正式を予め求めておくことが必要である.本論文では,天水田と傾斜畑からなる東北タイ天水圃場において実施したPR1の原位置キャリブレーションとその校正式を用いた土壌水分の測定例について報告した.原位置キャリブレーションの場合は,室内と違って試料の水分調整などの手間がかからない.海外での集中調査の場合など手軽に行える利点がある.キャリブレーションの結果,校正式は,ローム質砂土についてはボルツマン関数,砂質粘土については直線回帰式となった.これらの校正式を用いて土壌水分を測定したところ,天水田,傾斜畑ともに60 cm以深の土壌水分の変化が非常に緩やかで年間を通じて高い含水率が維持されることがわかった.また,天水田は傾斜畑よりも土壌水分を貯留しやすいことが推察された.