中国においては,ここ数年,急速な経済成長及び社会生活の向上を遂げつつある一方,洪水等の水関連災害や水不足,水質汚染等,水に関して実に多くの課題を抱えている.なかでも人口増加や,その自然・気象条件から季節的・地域的分布がアンバランスとなっていることなどを要因として,中国の水資源問題は今後の持続可能な成長・発展に係る重大な制約条件となることが懸念されている.本研究では今まであまり広く知られていなかった中国の水資源問題について,特にその首都・北京市の水資源に係る現状と課題,そしてその解決策として講じられている越境導水について将来的な持続可能性の観点から検証を行うとともに,地域内における限られた水資源を有効に利活用しようとする取り組みとしての節水型社会づくりについて初歩的な考察を行い,アジア地域を中心に今後更なる成長・発展が見込まれる国々における統合的水資源管理のあり方について提言するものである.