水文・水資源学会誌
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原著論文
多様な水田水利用を考慮した分布型水循環モデルの開発(I)
― 作付時期・作付面積推定モデル ―
谷口 智之増本 隆夫清水 克之堀川 直紀吉田 武郎
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2009 年 22 巻 2 号 p. 101-113

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抄録

モンスーンアジア地域での水利用は水田が主体であるが,そこで見られる多様な水利用を考慮した分布型モデルはいまだ得られていない.そこで,一連の論文では水田水利用を考慮した分布型水循環モデルを提案する.本稿では,その中で「水田の種類や降水に応じて変動する水田作付状況を推定する作付時期・作付面積推定モデル」を提案し,全体モデルをメコン河流域に適用した結果を示した.得られた成果は以下の通りである.i)全体モデルで推定された実蒸発散量は,現地観測から算定した蒸発散量の期別変化をよく再現した.ii)降水量や水田水利用形態の違いが作付けに及ぼす影響を考慮することで,各年の条件に応じた作付状況を推定できた.iii)修正ペンマン・モンティース式から算出される基準蒸発散量と推定された実蒸発散量を比較した結果,天水田面積率が高い地域の乾季に明瞭な差が生じることがわかった.iv)提案モデルは分割したセルごとに土地利用を面積率で与えているため,土地利用変化に伴う影響評価への対応も容易である.また,水田形態や水稲品種に応じて作付けパターンを設定することで,雨季作に見られる作付けの不安定さが表現できる等の特徴を有している.

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© 2009 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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