水文・水資源学会誌
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原著論文
地下水流動計算と放射性同位体を用いた地下水・表流水交流解析
松本 大毅広城 吉成神野 健二堤 敦
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2009 年 22 巻 4 号 p. 286-293

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抄録

福岡市西部に位置する九州大学新キャンパス移転用地周辺では,施設園芸用水や飲料水として地下水が利用されている.新キャンパス造成工事は2000年6月より開始され,山林面積の減少による地下水涵養量の低下が地下水および湧水へ与える影響が懸念されている.そのため地下水・表流水の相互作用を把握することは,周辺地域の有効な水資源利用をおこなう上で極めて重要となる.
本研究では,新キャンパス内に水源を持つ大原川流域の地下水・表流水の交流量を推定するために,トレーサーとしてラドンを用いた.その結果,特にS3~オコナ間ではラドンによる解析から活発な地下水・表流水の交流が起こっていることが示された.
一方,地下水流動の数値解析によって得られた25年間の流速分布の時系列をもとに,ラグランジュ粒子追跡法によって大原川流域の集水域の推定を行い,大原川の各区間の左右岸集水域を推定することができた.
以上のように,ラドンによって,大原川に流入する地下水の具体的な交流箇所,およびラグランジュ粒子追跡法によって,地下水が左岸,右岸のどちらから大原川に流入するのか等の結果を得ることができた. 両手法を合わせることにより,地下水・表流水のより詳細な交流解析が可能となった.

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© 2009 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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