水文・水資源学会誌
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原著論文
模擬乾燥地条件下の砂質土壌での蒸発―凝結に関する実験的検討
下島 栄一玉川 一郎ジェフリー・V・ ターナー
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2011 年 24 巻 3 号 p. 159-169

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抄録

 乾燥地域での日周期的な気象条件による土中の水蒸気の挙動特性を明らかにするために,西オーストラリアの塩分を含む砂質土壌によるカラム実験を,制御された大気条件下で実施した.砂柱の上表面は,一定温度(25 ℃)であるが,熱照射付与の有無の条件で,相対湿度が20 %から65 %へ,あるいは逆の方向に階段的に変化する一定湿度をもつ大気に開放して実験を行った.さらに,相対湿度65 %の大気条件下,照射条件のみ階段的に与えた後,停止するという実験ケースも同様に行ったが,それぞれは昼間及び夜間に対応している.
 大気の湿度のみ階段的に変化させるとき,土壌中の水蒸気密度ρvx/√tx:深さ,t:経過時間)の関数に従って変化する.この特性やこれと関係する結果は,本論文で提案されるρvに関する等温条件下の修正水蒸気拡散方程式を介して説明された.実験的に評価された水蒸気拡散係数とモデル計算との比較によって,土壌層内の蒸発と凝結により破過曲線としての水蒸気密度分布の移動は顕著に遅延されることが分かった.実験を通して明らかにされた水蒸気の挙動特性は,乾燥地での地面と大気間のみならず地中での水分輸送の挙動を理解する上で重要となる.

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© 2011 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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