水文・水資源学会誌
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原著論文
衛星リモートセンシングによる中国三江平原の水田面積の経年変化に関する研究
李 海蘭近藤 昭彦沈 彦俊
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2011 年 24 巻 6 号 p. 328-336

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抄録

 オホーツク海における高い生産性は,アムール川からの溶存鉄の供給により維持されていることが近年明らかにされているが,陸域の土地被覆変化,特に湿原の変化が溶存鉄の動態に大きな影響を及ぼすことが懸念されている.1980年代以降のアムール川流域での土地被覆変化は中国三江平原で大きく,それは主に水田面積の飛躍的な増加に伴う湿地の減少であるとされている.そこで,本研究では衛星リモートセンシングを利用して近年の三江平原における水田面積の時空間的変化を明らかにすることを目的とした.1980年頃と2000年頃の中国1 kmメッシュ土地利用データにより,三江平原ではこの間にジャムス市周辺及び平原南部の宝清(baoqing)県で水田が増加していることが明らかになったが,Landsat TM多時期画像の同時解析によっても同様の結果が得られたことにより,2000年における土地利用情報の精度を検証した.次に水田分布の経年変化を求めるためにSPOT/VEGETATIONデータを利用した.SPOT/VEGETATIONから計算できる指数値(NDWI,NDVI)の季節変化から水田を判別し,年ごとに水田分布を求めた.Landsat TMによる2000年の水田分布とSPOT/VEGETATIONによる水田分布はほぼ一致した.そこで,SPOT/VEGETATIONを用いて1999年から2007年の水田分布を求めた.各県ごとに集計した水田面積は統計年鑑による統計値とほぼ一致した.本研究では水田分布の経年変化を衛星解析で求める手法を確立したが,この情報は土地被覆変化による水循環・物質循環変化を解析する基礎情報として使うことができる.

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© 2011 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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