水文・水資源学会誌
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総説
森林流域からの土壌流出の実態・支配因子と予測モデル開発の現状と課題
池田 英史若松 孝志中屋 耕阿部 聖哉
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2012 年 25 巻 6 号 p. 396-409

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抄録

 近年,わが国では間伐等の森林管理が十分に行き届いていない人工林の面積が増大している.このような人工林では林床の裸地化が進んだことにより流出した土壌が河川に流入し,河川環境に悪影響を及ぼすことが懸念されている.一方で,同様の土壌流出が問題となっている欧米の農耕地においては,土壌流出を予測するモデルが提案され,防止策の立案・評価に適用されてきた.日本国内においても沖縄などの農耕地についてはこれらのモデルの適用例が数多く報告されているが,森林流域についての適用事例は多くないのが実状である.これらの予測モデルを用いて森林流域における土壌流出を防止する方策を立案するためには,森林からの土壌侵食を促進もしくは抑制するメカニズムを解明し,単一斜面や小流域を対象とした従来の土壌流出モデルに組み込む必要がある.この森林からの土壌流出が増加するメカニズムとしては,林内の光環境の悪化により下層植生が減少することによる侵食の増大などが考えられている.しかし,既往の土壌流出モデルではこれらのメカニズムは十分には考慮されておらず,定式化とモデルへの組み込みが必要と考えられる.

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© 2012 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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