水文・水資源学会誌
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原著論文
気候変動が日本の水資源に与える影響推計(I)
-日本全域水資源モデルの開発-
小槻 峻司田中 賢治小尻 利治
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2013 年 26 巻 3 号 p. 133-142

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抄録

 気候変動が大きな問題となっている現在,その影響を解釈・翻訳し,社会に伝える事は科学の重要な使命である. 一連の論文では,日本全域水資源モデルの開発を行い,気候変動が日本全流域の水需給バランスに与える影響を推 計する.本稿では,稲成長・水文陸面・灌漑・河道流下・ダム操作の5つのモジュールから成る水資源モデルを提案 し,日本全域に適用し検証する.提案する水資源モデルは,従来の水文・水資源分野で扱われてきた水循環の解析 に加えて,稲成長や収穫量を解析可能である.観測値を基本とした気象強制力データを用いて,10年間(1994-2003 年)の河川流量・米生産量・水ストレス解析を行った.稲成長モジュールにより解析された稲成長(出穂日や収穫 日)や収穫量は,都道府県の統計情報によく一致した.国内20の一級河川で解析河川流量を検証し,冬季の降雪量 補正が月流量の再現性を改善することを示した.月流量で計算したナッシュの効率係数は,流域別のパラメータ調 整を行うことなく,多くの河川で0.8を超えた.CWD指標を用いて解析された日本域の水逼迫度合は,統計情報と 同様の傾向を示し,実際の水逼迫を反映することを示した.

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© 2013 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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