2014 年 27 巻 3 号 p. 105-115
本研究では,地域で活用されていない浄水汚泥を有効活用して汚泥の処理費を軽減させることと,諫早湾干拓調整池の水で環境基準値を超過している全リン濃度を低減させることの両者達成の可能性を把握するために,浄水汚泥を用いたリン酸除去効果を評価し,調整池に適用した際のリン酸濃度変化についてシミュレーションにより試算することを目的とした.調整池の水をくみだし,水処理施設において浄水汚泥を用いて完全混合するリン酸除去法では,おおむね1年間で1,400~2,000 tの汚泥が必要であることが分かった.調整池に浄水汚泥を投入する浸漬法によるリン酸除去法では,1年間で3,000 tの汚泥が必要であることが分かった.混合法では,巨大な吸着槽(例えば105 m3 のオーダー)が必要であり,浸漬法では汚泥を調整池に投入したままとなり,また調整池からリンを取り除いていないという欠点がある.浄水汚泥はリン酸除去に利用可能であるが,必要量や施設規模が膨大であるため,さらなる検討が必要である.