水文・水資源学会誌
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巻頭言
環境と防災
島谷 幸宏
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2016 年 29 巻 2 号 p. 105-106

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抄録

 「防災」とは人間が生活する「環境」を災害から守ることであるから,「環境」と「防災」は本来,対立概念では決してない.しかし,災害復旧や災害の復興において,しばしば,「環境」と「防災」に関して,コンフリクトが生じる.復興初期のムードに基づいた復興計画では,「生命・財産」に重点が置かれた計画になりがちであるが,復興中後期の段階になると,暮らしや教育,環境,利便性,福祉などで,環境の質の向上を目指した要求が社会から出てくるようになる.そのような社会状況の変化に対応して,「環境」と「防災」のコンフリクトが発生する.そのことを防ぐためには,災害にかかわる関係者が,災害発生後の社会状況が時間的に大きく変化することを十分に理解することがまず重要である.そして,復興時の社会状況や雰囲気に流されない強い精神力と復興後の社会に対応した環境も含めた復興計画を立案できる力量を備える必要がある.

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© 2016 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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