水文・水資源学会誌
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原著論文
新疆における食糧生産と人間活動及び自然条件との関連性
シャオケイテイ アジデリヌル アジ近藤 昭彦
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2016 年 29 巻 3 号 p. 166-175

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抄録

 乾燥・半乾燥地域における食糧生産は水によって支えられており,食糧生産量の変動の理解は,水資源管理と密接に関わる.本研究では,単収を食糧生産の主な指標とし,1990年以降の新疆における食糧生産量の経年変化と,人間活動及び自然条件との関連性について検討した.その結果,増加傾向にあった単収は,政府の農業税金などが廃止された2004年を境に伸び悩みに入り,2008年には大幅に減少した.その主な要因は,新疆における灌漑施設・設備の損害による灌漑率の低下,機械化に伴う生産コストの上昇による農民の生産意欲の減退及び技術採用行動の変化であり,食糧生産量の減少をもたらしたことが明らかになった.また,経済発展に伴う食生活の高級化・多様化による需要量の変化が穀物の単収の変化をもたらしたことが確認できた.自然条件としては,干ばつなどの自然災害が食糧生産に直接影響するともに,自然災害による生産コスト(主に農薬コスト)の増加が,農家の生産過程における負担を増加させ,間接的に食糧生産量にも影響を与えたと考えられる.

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© 2016 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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