2016 年 29 巻 4 号 p. 227-237
乾燥・半乾燥地域における土壌水分は地表面の熱収支変化,気候変化などと関連する重要な水文要素である.近年,衛星リモートセンシングを用いて,広域を対象とした長期間の土壌水分を観測することが可能となり,改良型マイクロ波放射計(AMSR-E)による土壌水分の広域・時系列データが利用できるようになった.そこで,本研究は中国の山西省においてAMSR-E土壌水分の検証を行い,これと検証地の地表面の水文因子(降水量)や植生因子(NDVI)との関連を調べることを目的とした.その結果,108カ所の地上観測地点のうち64カ所においてAMSR-E土壌水分と実測土壌水分との良い相関が得られた.相関係数が高い地点は,1)十分な密度の地上観測地点がある地域,2)土地利用タイプが均一な地域,3)地形が相対的に平坦な地域であり,これらの条件を考慮することによりAMSR-E土壌水分観測から広域の土壌水分変動をより正確に捉えることができることが明らかとなった.