水文・水資源学会誌
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解説シリーズ「都市気象学の体系化に向けた最近の研究から」
ラグランジアン人間気象学
解説シリーズ「都市気象学の体系化に向けた最近の研究から」
仲吉 信人
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2016 年 29 巻 4 号 p. 238-250

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抄録

 本解説は,個人の動線に沿った微気象変化,およびそれに伴う人体生理応答を計測・評価する都市生気象学の新たな研究手法について紹介するものであり,本手法の根幹技術であるウェアラブルな気象・生理計測システム,およびそれを用いた都市街区での被験者実験に焦点を当て報告する.ウェアラブル計測システムは,微気象因子として全ての熱環境因子(気温,湿度,風速,短波・長波放射),生理因子では皮膚温度,脈拍,活動量指標,温熱感覚を計測する.微気象因子のうち,風速,短波・長波放射量は本手法のために開発した新センサ,グローブ風速・放射センサを用い評価する.本手法の応用例として,2011年8月22-24日にかけ岐阜県多治見市の都市街区にて温熱生理実験を実施した.本計測システムにより,AMeDASなどのルーチン観測網では評価できない街区微気象の局所性が可視化され,また微気象に対する生理応答に性差・体格差といった明確な個人属性の影響が見られることが確認された.都市の微気象評価や生気象研究における本手法の有用性が示された.

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© 2016 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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