水文・水資源学会誌
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原著論文
水田灌漑用水利用からみた韓国の河川の流量特性
李 相潤石井 敦申 文浩谷口 智之佐藤 政良
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2017 年 30 巻 2 号 p. 102-111

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抄録

 一流域内で水田として開発できる面積は水源となる河川の流量特性によって強く制約される.本報は,日本とよく似た温帯モンスーン気候で水田水稲作を行っている韓国を対象に河川の流量特性を検討し,日本の河川と比較分 析を行った.分析には韓国の主要河川14箇所の10~30年間の日流量データを用いた.その結果,次のことを示した.1)年非超過確率1/10で評価した韓国の河川は水田灌漑期間の渇水時比流量が0.1~0.2 m3/s/100 km2程度で,日本 の約1/10と極めて小さい.2)その要因は,韓国では日本と比べて非灌漑期である10~3月の降水量が極めて少なく,山地流域の地質が影響している可能性があると推定される.3)灌漑期間中に一定流量を供給するために必要なダムの貯水池容量は,日本の河川の数倍以上と大きい.それは,ダムからの補給期間が長いという流量特性による.4)このことが,韓国では日本と比べて河川自流灌漑による水田開発の面積が限られ,大規模なダム開発がなされる現代まで天水田や水源の不安定な灌漑田が多かったことの背景条件になっていると推察された.

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© 2017 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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