森林の水源涵養機能を適正に評価するためには,山地源流域の湧水の涵養域や基岩内の地下水の移動プロセスを理解することが重要である.本研究では,地下水と湧水における溶存イオン濃度の主成分分析結果に基づいた水質の類似度評価手法を提示し,その手法を堆積岩山地源流小流域に空間的に高密度に設置された複数のボーリング孔の地下水サンプルと河道の湧水サンプルに適用することで,湧水の涵養域と河道への流出プロセスを推定した.その結果,源頭部の湧水は渓流直上流の斜面の地下水の影響が大きいのに対して,河道部の湧水は河道を下るにつれて側方の斜面の地下水の影響が大きくなることが示された.ゆえに,山地源流域には異なった湧水の涵養域が存在することが示され,同様の傾向は隣接した流域にも見られた.さらに,基岩内の鉛直断面においては,複数の帯水層が存在し,局所的に湧水と類似性の高い地下水が存在することが示された.このように,本研究では堆積岩山地源流の小流域における湧水の涵養域の詳細を明らかにし,基岩内部の地下水がきわめて複雑な水文プロセスを経て河道に湧出していることが明らかとなった.