水文・水資源学会誌
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原著論文
36と89 GHzの衛星マイクロ波観測による陸域雲水量の雲降水粒子より分け推定の可能性の検討
瀬戸 里枝鼎 信次郎
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2021 年 34 巻 3 号 p. 161-180

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抄録

 地球水循環の把握において,衛星マイクロ波から推定される雲水量は貴重な情報である.しかし,既存の推定手法の多くは,対象の雲降水粒子の種類を一つに限定している.一方,雲降水粒子種類の違いは,雲の寿命や降水特性を左右するため,その同時推定が望まれている.更に,既存の手法は海洋上のみに適用されるものがほとんどであり,陸域雲水量の推定法の確立は,重要課題の一つである.本研究では,まずSeto et al.,(2018)で提案された, 89.0 GHzを主とする複数周波数のマイクロ波を活用した陸域雲水量の推定手法を基に,36.5 GHzを用いる手法を新たに構築し評価した.そして,両手法の推定値と衛星雲レーダープロダクトとの比較から「マイクロ波と雲降水粒子の相互作用の周波数・偏波依存性の活用によって,粒子種類ごとに陸域雲水量を推定するアルゴリズムの可能性」を検討した.結果,液相の陸域雲水量は36.5 GHzからでも精度よく推定できることが示されたとともに,36.5と 89.0 GHzの観測の差から雲氷の雲水量を推定し,更に36.5 GHzの偏波特性から,雲水と雨粒の雲水量を区別して推定できる可能性が示された.

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© 2021 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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