水文・水資源学会誌
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研究ノート
地質と流域サイズに基づくタンクモデルの貯留量と土壌雨量指数の比較
野口 正二小杉 緑子高梨 聡
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2022 年 35 巻 5 号 p. 339-347

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抄録

 土壌雨量指数は降雨による土砂災害の危険度の高まりを把握するための土中の水分量の指標で,直列3段タンクモデルを用いて各タンクの貯留量の合計として算出される.本研究では,異なる地質によるタンクモデルの貯留量と花崗岩を地質とする流域面積の大小がタンクモデルの貯留量に及ぼす影響について検討する.多重比較の結果,大流域における地質別の降雨イベント時の土壌雨量指数の平均値は,花崗岩と古生層,花崗岩と第三紀層,火山岩と古生層および火山岩と第三紀層の間に有意な差が認められた.タンクモデルの貯留量はイベントの総雨量または最大降雨強度に応じて増加する傾向があり,タンクモデルの貯留量の増加する割合は,第三紀層<古生層<花崗岩<火山岩の順番で高い値を示した.地質別のタンクモデルの貯留量の最大値の順位は,従来の報告と同様であった.花崗岩においてタンクモデルの貯留量は,小流域と大流域間で有意な差が認められた.タンクモデルの貯留量の最大値の順位は,流域面積の大小によって異なった.流域特性を踏まえたタンクモデルの貯留量の定量化に向けて,小流域の直列3段タンクモデルのパラメータ値の事例を増やす必要性が考えられた.

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© 2022 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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