2026 年 39 巻 1 号 p. 22-36
地球温暖化の進行に伴い,台風や豪雨等の極端気象によって生じる災害は激甚化が懸念されている.そのため近年,「気象制御による極端風水害の軽減」を目標とする研究プロジェクトが複数立ち上がっている.ただし,気象制御技術が適切に実社会に導入されるためには,工学・理学的な技術開発に加え,当技術の導入に関わる倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues; ELSI)の解決が極めて重要となる.そこで本研究では,気象制御技術に関連するELSIの中でも,特に法的課題に着目し,防災学者・気象学者・法学者らを交えてKJ法により気象制御における法的課題の洗い出しを行った.さらに,それらの位置付けを整理・議論することにより,重要な論点として,1)気象制御の実施主体および実施基準,2)気象制御に関わる補償のあり方が抽出されたため,これらに着目し,気象制御のための法制度設計に向けて基盤となりうる既存の法制度の調査や新しい法的枠組の必要性を検討した.本論文は,新たな試みである気象制御技術の開発・社会実装を行うために必要な,法的課題の検討にとって肝心な第一歩である.