分布型モデルを開発して,東京都の水・熱収支を統合して解析した.計算格子内の土地利用の非均質性を表現するためにはネスティング法を採用した.蒸発散の推定にはPenman-Monteith方程式を,顕熱フラックスの算出には空力学的方法を,また地表面温度を効率的に算出するためにはForce-Restore法を使用した.大雨時には一般化したGreen-Ampt浸透モデルを適用して浸透と地表流出を算出し,その他の気象条件では不飽和土壌中での水分の再配分を計算した.水平方向の地中の水輸送に関しては,2次元飽和地下水流れの方程式を解いた.このため,地下水位が表面流出と熱フラックスに与える影響などを検討することが可能となった.なお,解析結果の妥当性は,下水処理場への流入水量と東京タワーでの風速,気温から算出される顕熱フラックス及び多摩川石原流量観測所の流量に対する検証により確認された.その結果,都市化と気象変化(1992~1994年)が東京都の水・熱収支に大きな影響を与えることがわかった.