関東地方の11流域において,森林流域からの流出量とダム貯水池からの放流量を流況曲線により対比して,ダム貯水池が渇水を緩和する働きを検討した.評価の指標として,森林流域下端に位置するダム貯水池の流出平準化機能を定量的に表す流況安定変換率,達成度を新たに導入した.また,鈴木(1988)により定義された,安定した水資源を獲得するうえで発生する水不足量を判断基準として,森林流域におけるダム貯水池が流況の安定に資するかどうかを考察した.その結果,平年の場合,対象とした11流域中10流域では,流況安定変換率及び達成度が相対的に小さく,ダム貯水池が渇水を緩和するようには機能していなかった.これらのダム貯水池は,流況の安定に貢献していなかったと判断される.一方渇水年になると,7流域の流況安定変換率が平年の場合と比べ大きくなり,そのうち5流域のダム貯水池が,流況の安定に貢献していた.