東アジア夏季を対象とした領域気候モデルにより, 土壌水分と降水の関係に関して数値実験を行なった. 土壌水分を飽和に固定したWet Run, 乾燥状態に固定したDry Runによる降水量を比較した結果, Wet Runの方が降水量が大きい領域AとDry Runの方が降水量が大きい領域Bが抽出された. この違いを調べるため, 更に領域Bの地表面のみをWetにしたPW Runを試みた.
水収支に注目したこれら数値実験の分析の結果, 以下のような結論が得られた. (i)土壌水分はその地域での降水量の大きさとともに, 水平方向水蒸気フラックスを通して, フラックスに関して下流域の降水量に大きな影響を与える. (ii)下流域へ与える影響はΔP/ΔEが1より大きいかどうかに依存する. (ΔP/ΔEは, 降水量の差(Wet Run-Dry Run)/蒸発量の差(Wet Run-Dry Run)) (iii)‘ΔP/ΔE>1’である地域においては, Dry Runにおける境界層内の相当温位が低く保たれている. これは境界層上部でのエントレインメントによるものと考えられる.‘0<ΔP/ΔE<1’である地域ではこの特徴は見られない.