1998 年 11 巻 6 号 p. 575-585
森林のCO2吸収の実態を把握するため,落葉広葉樹林上においてCO2フラックスを1997年4月から連続測定している.CO2分析器としてClosed-path型分析器を用い,渦相関法によってフラックスの直接測定を行っている. CO2フラックスは明瞭な季節変化を示した.フラックスは春から秋までは下向きとなり,冬には上向きとなった.春,樹木が一斉に展葉すると,フラックスの向きが上向きから下向きに転じ,その後フラックスの大きさが急激に増加した.夏から秋のなかごろまで,下向きフラックスは徐々に減少し,秋の終わりには落葉とともに急激に減少した.また,日毎のフラックスの変化は,樹木の葉が茂りCO2吸収が盛んに行われているとき,光合成有効光量子束密度と高い相関がある. 大気と森林との間の年間炭素交換量を把握するため,欠測日のCO2フラックスを,昼間はフラックスの光反応曲線から,夜間は気温とフラックスの関係から推定し,フラックスデータの補間を行った. CO2フラックスの合計から得られた年間炭素交換量は-357gCm-2y-1であった.