東南アジア熱帯林山地小流域における降雨流出特性を知ることを目的として,マレイシア及びインドネシアに設けた3試験流域において降雨量・流出量の観測を行い,観測結果を比較検討した.天然の熱帯雨林に覆われた山地源流域の流出水が枯渇することがある一方で,森林が皆伐された後に植生が自然回復した流域が安定した流出量を維持しているという結果が得られた.熱帯林小流域における年流出量や流出量の変動特性は,降雨・蒸発散・基盤地質という3要素を分類することによりある程度整理された.熱帯林におけるこれまでの山地森林水文学研究の問題点を指摘し,21世紀を迎えて進むべき方向について述べた.