水文・水資源学会誌
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国際流域の管理と係争の解決において国際機関が果たし得る役割
中山 幹康
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1998 年 11 巻 7 号 p. 723-731

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抄録

国際流域における水資源に関わる係争を未然に防止し,かつ係争が生じた場合にはこれを調停する役割が国際機関には期待されている.国際機関が果たし得る役割は,(1)係争の調停役として,(2)流域国間の協調の枠組み策定,(3)問題の所在を訴える場として,(4)世界的な枠組みの策定,の4類型に分類し得る.水資源を巡る係争が戦争を引き起こす程の深刻さを持つに至った時に,国際機関は「非常時」における仲介メカニズムとしての機能を発揮することが期待される.国際機関の主導によって策定される流域国間で協調のための枠組は,流域国の関係が友好的な限りにおいては国際流域での水資源の利用を円滑化するための有効なメカニズムであり得るが,流域国間に係争が生じた場合においても斯様な枠組みが有効であるという保証はない.国連総会あるいは安全保障理事会は国際流域での戦争の勃発のような「非常時」においては有効なメカニズムであり得るものの,「平時」における国際流域での係争の解決のためには多くを期待出来ない.「国際河川の非航行的利用に関する条約」は将来において国際流域の水資源の使用に関する基本的原則として定着し,流域国間の係争を抑止する効果を持つものと期待される.

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