地表面に敷石の施された斜面ライシメーター(幅3m,長さ6m,土壌深度2.5m,傾斜角20度)を対象として,Richards式を用いて鉛直2次元浸透数値計算を行い,長期にわたって流出量,土壌水分分布を計算し,観測結果と比較することを試みた.計算に際しては修正Picard法と,空間方向への圧力水頭計算値の振動を抑制する上流法を用いた.地表面蒸発量は地表面に相当するコントロールボリュームから大気へ移動する流量フラックスとして陽的に与えた.この結果,本手法がライシメーター内土壌が極めて乾燥した状態から湿潤へ至る過程,湿潤から乾燥に至る過程について浸透数値計算により流出量,土壌水分分布, 2次元的な土中水流動の特徴を連続的に再現できることが可能であることが分かった.ただし絶乾状態へ至る過程については観測値の再現性が良くなかった.斜面内部の圧力水頭変化をより精度良く再現する土壌の保水性のパラメーターは,現場でのサンプル調査の値と大きく異なるのものではないことが分かった.