水文・水資源学会誌
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タイにおける大気水収支と広域蒸発散量
1996年から1997年観測の速報
渡辺 哲平沖 大幹虫明 功臣
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1999 年 12 巻 3 号 p. 221-230

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抄録

GAME-T (GEWEX Asia Monsoon Experiment Tropics)の予備観測で1996年から1997年にかけての雨期と乾期にタイの複数の地点において2週間のゾンデ観測が行なわれた.これらの観測で得られた大気データを基に,3箇所の観測地点からなる領域を設定し,大気水収支法を用いてその領域の水蒸気収束量,正味の水蒸気収束量(P-E)を求めた.これを4DDAデータから求めたものと比較したところ,時間,日単位ではゾンデデータから求めたものの方が変動も激しく,ピークも大きなものになるが,観測期間である2週間の平均では双方共にほぼ一致していることがわかった.また,ゾンデデータの水蒸気収束量から,鉛直方向で700hPaから850hPaにおいて収束のピークがあることがわかった.さらに降雨量データを用い,ゾンデデータと4DDAデータのそれぞれについて領域の広域蒸発散量を推定し,それをPan Evaporationのデータと比較したところ,2週間の期間平均では現実的な値になることがわかった.また,ゾンデデータでは通常の指定気圧面のみによるデータと共に特異点を含めた解析を行なったが,特異点を含めた場合,指定気圧面のみの場合と比較して正味の水蒸気収束量の絶対値がやや大きく見積られることがわかった.

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