半島マレイシア・熱帯雨林において,テンシオメーターを用いて土壌水分の観測を行った.さらに,土壌サンプルを採取し,土壌の体積含水率(θ)とサクション(ψ)の関係を測定した.土壌のθ―ψ関係は,van Genuchtenの式で良く再現することができた.マクロポア(ψ>-3.06cmH2O)とメソポア(-3.06≧ψ≧-306cmH2O)の割合は,深度が増すほど小さくなる傾向があった.飽和体積含水率と残留体積含水率の差から求めた深さ160cmまでの土壌層に貯留可能な雨水の量は,420mmであった.本試験地は,湿潤熱帯地域にあり,明瞭な乾季・雨季はないものの,土壌水貯留量は,明瞭に土壌の乾燥状態と湿潤状態を示し,降水量に応じて変動した.2年間における深度0~160cm間の土壌水貯留量は,488~694mmの間で変化し,平均値は,565mmであった.一水年の降水量と河川流量の水収支から本流域の蒸発散量を求めることは注意が必要である.土壌水貯留量の降雨に対する変動は,土壌層上部(0~80cm)の方が,下部(80~160cm)より顕著で,年間を通じて高い値で変化した.1.6mの土壌プロファイルの水収支から平均日蒸発散量を求めた結果,2.1~7.3mmday-1の範囲(平均値4.6mmday-1)の値を示した.