水文・水資源学会誌
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降雪遮断の水文気象学的な影響に関するモデル研究
大久保 玲子山崎 剛
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2000 年 13 巻 5 号 p. 362-370

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抄録

降雪時に重点をおいた遮断蒸発モデルを作成し,遮断蒸発の水文気象学的な影響について1次元モデルを用いて調べた.遮断蒸発モデルは既存の降雨に対するモデルを基に,新たに降雪にも対応できるように作成した.モデルは盛岡・札幌において過去に得られた冠雪量および林床積雪量の観測値をよく再現できた.遮断を入れないあるいは降雪も降雨と同じ扱いをする場合と比べると,降雪の遮断を考慮した場合は熱・水収支ともに大きな違いが生じた.具体的には,遮断を入れないと森林は大気に対してほとんど熱源として作用するが,降雪遮断を考慮すると冠雪時には蒸発潜熱が大きく,顕熱は大気から植生に向かうことが多かった.また,林床の積雪も遮断の扱いによって,積もり方,融け方とも強い影響を受けた.一方,冠雪によるアルベドの上昇が熱.水収支に及ぼす効果は一時的で,冬期平均の熱・水収支に大きな違いをもたらさなかった.以上のことから熱・水収支を考える際に重要なのは,降雪遮断の効果は降雨遮断に比べて量が多く温度が上がらず,遮断した雪の融解と蒸発に大きなエネルギーを必要とすることであると言える.

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