水文・水資源学会誌
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関東ロームのような変形しやすい土壌における吸収能の近似式を用いた浸透能の評価
李 善勲
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2000 年 13 巻 6 号 p. 453-461

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抄録

本研究は関東ロームのような変形しやすい土壌において同じ土性と粒子密度の条件で乾燥密度の相違のみによって生ずる物理的特性の規則的変化を用いて浸透能の変化を評価することを目的とする.乾燥密度0.50~0.60Mg/m3の範囲において,特定の乾燥密度に相当する不飽和領域の含水比特性と透水特性は,それより高い乾燥密度の場合と一致した.有限要素法による数値シミュレーションの結果を用いて吸収能Sに関する近似式を求めた. 近似式は飽和透水係数ksおよび初期土壌溶液ポテンシャルと空気侵入ポテンシャルの差ψriにより説明できることが分かった.本土壌の水理特性のようにθ(ψ)とk(ψ)がψに関して多項近似関係を持つ場合,ψriの代わりに初期欠損体積含水率Δθと巨視的毛管長λc,を用いることは適切ではない.吸収能Sはks0.5にほぼ比例しており,この結果はWhite and Sully (1987)とほぼ一致した.それぞれの乾燥密度において飽和透水係数は吸収能に関して比例定数の役割を果たす.乾燥密度に対応する飽和透水係数の変化は間隙比の変化によって生じるため,その変化は浸透能に大きな影響をもたらす.関東ロームのような体積の変化を起こしやすい土壌における浸透能の評価において,乾燥密度はもっとも重要な土壌特性であり,乾燥密度の変化は様々な自然・人為的な原因によって生じる.したがって,乾燥密度によって生じる浸透能を正確に推定することは有用な水資源管理のために極めて重要となる.

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