水文・水資源学会誌
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蒸発過程における砂層中での水分・溶質移動に関する相似性
下島 栄一玉川 一郎
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2001 年 14 巻 2 号 p. 121-130

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抄録

乾燥・半乾燥地での地面蒸発下の土壌水や溶質の移動を調べるために, field capacity下の砂丘砂による砂層の表面を一定温度(25℃)・湿度(20%)の大気に開放して蒸発実験を行った.その結果,以下のことが分かった. (1)砂層内の水分量分布の時間変化はボルツマン変換,即ちX/√t(=λ)の関数で与えられる. ここに, Xは深さ, tは時間である. (2)砂層表面を通過する水蒸気フラックス(蒸発速度)は√tに逆比例して減少し, また蒸発域は√tに比例して深くなる. (3)局所的な蒸発密度はλの関数をtで除したもので与えられる. (4)乾燥前線上方での水蒸気密度はλの関数で表せる. (5)Na+, Ca2+, Cl-, SO42-のような溶質は砂粒より溶出され, その局所的な溶出割合はλの関数をtで除したもので与えられる. (6)塩類集積は乾燥前線上方で顕著となり, そこでの種々のイオンの濃度分布はλの指数関数で与えられる.
砂層表面に熱照射(約550watt/m2)を同時に与えた実験においても, (2), (4), (6)の特性はほぼ認められたが, 乾燥前線上方での塩類集積はより顕著となっていた.

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