水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
ポテンシャル蒸発量からみた東アジアにおける近年の気候変化
徐 健青
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 14 巻 2 号 p. 151-170

詳細
抄録

近藤・徐によって提案されたポテンシャル蒸発量と気候湿潤度(=降水量/ポテンシャル蒸発量)を用いて,チベット高原を含む東アジアの8地点における近年(1979~1995,盛岡のみは1986~1999)の気候変動を調べた.すべての地点で日平均気温・日最高気温・日最低気温とも上昇傾向にあり,特に冬の昇温が顕著な地点が多い.地表面温度と地温についても,多くの地点では上昇傾向を示している.年降水量1200mm以上の2地点(湿潤域)の気温上昇率は0.05K y-1以下で,パン蒸発計蒸発量は減少傾向にある.それ以外の地点の気温上昇率は0.05Ky-1を超え,パン蒸発計蒸発量は増加傾向にある.これは,気温上昇がパン蒸発計蒸発量の増加要因となっている可能性を示唆している.なお,ポテンシャル蒸発量の計算値はパン蒸発計蒸発量の変化傾向とほぼ一致している.また,8観測地点のうち,5地点で降水量が増加傾向にあった.各地点における気候湿潤度の変化は降水量増減にほぼ対応している. Brutsaert and Parlange(1998)は,最近数十年間の,世界各地におけるパン蒸発計蒸発量が減少傾向にあることを報告しているが,本研究の結果は,パン蒸発計蒸発量の長期的な変化傾向がその地域の乾燥度合や気温変化に依存している可能性を示唆している.

著者関連情報
© 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top