水文・水資源学会誌
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礫層および風化花崗岩からなる丘陵地源流域における流出・水質特性
辻村 真貴恩田 裕一小松 陽介清水 卓弘松村 和也服部 重昭中川 有里松井 孝子
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2001 年 14 巻 3 号 p. 229-238

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抄録

流域の地質条件と降雨流出過程の関係を検討する目的で, 断層によって礫層および風化花崗岩地域に分けられた4つの丘陵地源流域において, 水文観測, 河川水質観測, 土壌水分観測等を実施した.また流域を含む面積約35haの地域において河川水および湧水の流量調査を行った.礫層地域における河川・湧水の比流量は, 風化花崗岩地域におけるそれに比較し, とくに高水期において高い傾向がみられた.またHewlett and Hibbert (1967) の方法により算出した降雨時の直接流出率は, 礫層流域において高く, 風化花崗岩流域において低い傾向がみられ, 一方低水期の基底流量は風化花崗岩流域において高く, 礫層流域において低かった.風化花崗岩流域の河川水のNa+, Ca2+, HCO3, およびSiO2濃度は礫層流域に比べ顕著に高かった.礫層流域においては降雨に伴う土壌水の圧力水頭伝播が, 風化花崗岩流域のそれに比較し顕著に速やかであり, さらに礫層流域における地下水面の変動は, 降雨に対し敏速でかつ変動幅が小さいのに対し, 風化花崗岩におけるそれはきわめて緩慢でかつその変動幅はきわめて大きかった.以上の結果を考慮すると, 礫層および風化花崗岩流域における不飽和帯の降下浸透プロセスの違いが, 両地域における流出・水質特性の違いを生じさせ, また地形面上の流域界を超えた地中水の流動をもたらしているものと判断された.

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