水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
火山灰土壌が分布する積雪寒冷地流域の浮流土砂流出抑止に関する研究
I.土地利用変化に基づく流出変化とそのモデル化
秀島 好昭大野 隆中村 和正星 清小野 寺勝
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 14 巻 6 号 p. 445-451

詳細
抄録

北海道東部には,侵食を受けやすい軽しょうな火山灰が広く分布する.この地域では,最近の約30年で農地開発事業が行われ,山林・原野から畑地への土地利用変化が進んだため,土砂流出の防止が重要な課題となっている.土砂流出の増大の原因は,季節的に裸地化する土地が増えただけでなく,土地利用変化による流出機構の変化にもある. 著者らは,農地造成事業が進展した女満別川流域内の排水路を対象として,土砂流出抑止の一連の研究にあたった.研究当初において,当該流域の農地利用推移にともなう流況変化を分析することとし,この手法にARモデルを適用した.解析結果では,農地への転用が降雨に対する表面・中間流の応答を尖鋭化させ,有効降雨のうち表面・中間流の寄与分(分離則)が農地面積増分に応じて大きくなることを明らかにした.これらの現象を考慮し,流域の農地面積割合に応じて成分系への有効降雨比率を変える分布型の2成分ナッシュモデルを作成した.このモデルは簡易なものであり,単に各成分の有効降雨への分離割合を農地利用に応じて変化させるだけで,日流量が計算できる.すなわち,開発にともなう流況変化予測を行い,流出制御や流量~浮流土砂量の関係式による土砂量の概要把握時に応用できるものと判断する.

著者関連情報
© 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top