水文・水資源学会誌
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季節性を持つ水文時系列に基づくPDS法とAMS法の比較
西岡 昌秋宝 馨
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2002 年 15 巻 6 号 p. 569-583

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抄録

本研究は,43年間174個の流域平均2日雨量と47年間117個の洪水ピーク流量を用いて,水文頻度解析における毎年最大値系列(AMS)を使う方法と閾値超過系列(PDS)を使う方法の比較を行ったものである.豪雨や洪水を対象に統計解析を行い,これらの事象の発生を取り扱う場合に,その生起時間間隔の季節性を考慮することが重要であることを示した.これらの事象の発生過程は,統計的時系列解析でしばしば仮定されるポアソン過程とは実際には異なることに留意しなければならない. 次に,閾値を超過する水文事象の生起時間間隔の確率分布とその水文量の確率分布とを考慮したモンテカルロシミュレーションによる数値実験を行った.生起時間間隔の分布としては,季節性のないポアソン過程にもとづく指数分布を用いる場合と,豪雨や洪水が発生する季節性を考慮した経験分布を用いる場合について比較検討した.この結果,わが国の豪雨や洪水といった明確な季節性をもつ水文事象に対して,単純にAMSを抽出し,一般化極値(GEV)分布をあてはめて確率水文量を推定する場合,過大な確率水文量が求められる可能性が高いことを示している.ただし,PDSとしての水文事象の一年間の平均生起個数が4個程度以上であるか,もしくはAMS解析とPDS解析による確率水文量の結果が一致する場合には,AMSに適用した一般化極値(GEV)分布は精度の良い確率水文量を与える.

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