第四紀火山岩類で構成されている流域は他の地質の流域に比べ流域の水源涵養機能が優れているといわれる.これは,第四紀火山岩類からなる流域が保水性に富んだ火山灰,軽石などの火山砕屑物に覆われていることに由来している.筆者らは,南九州火山地帯における森林流域の流出現象を定量的に解明することを目的として水文観測を行っている.ここでは,火山砕屑物に覆われた森林流域と覆われていない森林流域の流出特性を比較し,火山砕屑物が流出に及ぼす影響について検討した.その結果,火山砕屑物に覆われた流域は,覆われていない流域に比べ,直接流出は短時間で終了し,その流出量も少なく,その流出率は約10%未満であった.また,火山砕屑物に覆われた流域においては無降雨時期にも安定した高い基底流量が観られた.