88年に北米地域に記録的な渇水が生じたが,この種の事象の客観的総括的な評価のためには,その激しさと空間的広がりとを同時に考慮する必要がある.本研究では,渇水を念頭にその原因である降水量に注目し,数千kmオーダーの広域を範囲とする月降水量資料に基づいて,その空間的分布特性の基礎的解析を行った。データはほぼ同一(Cf)気候域に属す合衆国本土内の観測点176地点の1984年から1988年までの5年間のものが用いられた.まず,多雨域と少雨域の特徴を分離して抽出し,それぞれの強度(平均値からの変動強度)と空間スケールを統計的手法に基づいて新たに定義した.多雨・少雨に関するそれらの指標をもとに降水の分布特性,年変動特性を考察した.続いて,変動強度と空間スケールを同時に考慮する生起確率分布を試算して,多雨・少雨事象の評価法を例示した.さらに,同時に得られるもう一つの空間スケールの特徴的距離(第2空間スケール)と大規模な気圧配置とを比較考察した.解析の結果,多雨については変動強度が,少雨についてはその空間的スケールが重要であること,88年渇水は特にその空間的規模の大きい激しい少降水状況であったこと,第2空間スケールは高低気圧間の距離に対応することなどが分かった。