1994 年 7 巻 1 号 p. 421-427
気象庁の気候観測資料時日別値から降水形態の判別気温を求めた.この判別気温は,「冬季の降水が50%の確率で固体降水(降雪)としてもたらされる際の地上気温」とした.判別気温は,季節と気候区によって異なると予想されるので,15の地域を設定し,各地域毎に冬季6ヶ月間(11~4月)の各月の判別気温を算定した.その結果,このようにして得られた判別気温は1.1~3.0℃の範囲に分布している. 次に,気象庁のメッシュ気候値(月平均値)から調和計算により日平均気温および降水量を計算した.この値(メッシュ地図)と判別気温を用いて日降水量を雪か雨か判定し,月毎に集計して,月平均降雪量と降雨量を得た.結果として,日本海側の冬季の降水の多くが降雪ではなく,むしろ降雨としてもたらされること,また,北海道から東北にかけての脊稜山脈では,冬季の降水が主として降雪としてもたらされることが明らかにされた. 本研究により,今後は冬季の日本における総降雪量の推定,あるいは,水資源として貯留される総積雪量の推定,地球温暖化による降雪量減少の予測なども可能になるであろうと考えられる.