乾燥地の灌漑農業が水循環や環境に及ぼす影響を評価するには,灌漑農地における蒸発散量の推定が重要となる.灌漑農場内のアルファルファ畑で,放射収支,エネルギー収支,微気象の計測を行った.日中の顕熱フラックスおよび潜熱フラックスの最大値は,それぞれ100W/m2,450W/m2であり,潜熱フラックスが非常に多くなっていた.また顕熱フラックスのバルク係数として0.0088が得られた.群落抵抗は,夜間に結露した水分の蒸発のため10時以前は0となり,日中は40~60sec/mの範囲で推移して17時以降に急激な増加を示した.この群落抵抗の日中の変化は,日射量を変数とするモデルにより説明された.以上の知見をもとに蒸発散量推定モデルを構築し,アルファルファ畑で継続計測した気温,水蒸気圧,風速,日射量,大気放射量,純放射量および地中伝導熱量のデータを用いて推定を行った.その結果,顕熱フラックス,潜熱フラックス,アルベド,結露量,蒸散速度が算出された.アルベドの日変化の推定値は,実測値とほぼ一致した.また推定日蒸散量は土壌含水量の日損失量と高い相関を示していた.