治水計画を立案する際,洪水規模の決定が必要である.この洪水規模とは確率分布モデルによって対応づけられるが,分布及び同定パラメーターの不確定性が問題となる.その解決には様々な方法が考えられるが,そのうち最も基本的な解決策の一つは大標本の構成,つまり何らかの方法で標本数を増加させることであろう.本研究では琵琶湖水位に関する定量的な記録が得られる江戸時代中期,具体的には1718(享保3)年以降を対象に,これまでの古文書研究によって蒐集された歴史洪水史料を整理,総合することにより,明治以前の湖水位の復元を試みるとともに,得られた結果から時代による諸条件の違い(瀬田川疏通能の違い)を取り除くことで,確率分布モデル推定の同一標本として使用可能な形に変換する.また,得られた結果を十分とはいえないが琵琶湖堆積環境ボーリング調査成果と比較することにより,その妥当性を評価する.