水文・水資源学会誌
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落葉広葉樹二次林における蒸発散量の季節変化
玉井 幸治服部 重昭後藤 義明
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1996 年 9 巻 4 号 p. 351-357

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抄録

京都府相楽郡山城町に位置する山城森林水文試験地北谷流域において,落葉広葉樹二次林からの蒸発散量を,Thornthwaite-Hol-zmanモデルにより推定した.モデル定数である顕熱の交換効率を示す数値は,着葉期で0.12,落葉期で0.077と,着葉期の値は落葉期の1.5倍に計算された.日蒸発散量の上限値は,着葉期には約12MJ/m2・dayで安定していた.それに対し落葉期における上限値は,11月の約6MJ/m2・dayから1月の約2MJ/m2・dayへと減少し,4月の約7MJ/m2・dayへと増加する凹型の季節変化を示した.樹種構成や,林床面蒸発量,遮断蒸発量を考慮した結果,Thornthwaite-Holzmanモデルによる日蒸発散量の推定精度は,着葉期においてはボーエン比法と同程度,落葉期においてはボーエン比法よりも高いと判断された.蒸発散量が有効放射量に占める割合は,1~4月は約40%,5~11月は約60%であった.この変化は着葉期,落葉期の変化とは約1ヶ月の遅れがあった.日本のヒノキ林,スウェーデンのマツ林の季節変化と比較すると,数値的には同程度であったが,季節変化には違いがみられた.

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