岐阜県多治見市廿原地区は,表題にあるような典型的農村振興に成功した事例である。同地区は,十数年前までは水田の約3/4が耕作放棄されるという状況にあった。それが,圃場整備を契機に「廿原ええのお」という集落営農組織が設立され,今は耕作放棄地が5%程度にまで解消している。本報では,圃場整備への合意形成や集落営農の展開のあり方について調査・検討した。そこで明らかになったのは,地域ビジョンなき合意形成や創発的な担い手の生成である。これらは,目標像重視の“計画”ではなく,現在に生きる“設計”の営みといえる。地区では,今後,集落営農をサービス事業体として,また公益的に田園環境を保全する仕組みとして発展させていくことが課題となっている。