農業(水稲)用水の水質基準が策定されて40年となった。この間,日本の水環境を取り巻く状況は大きく変わり,かつて問題になった農業用水の有機性汚濁や重金属汚染による農業被害は減少している。一方,灌漑農業は,作物や水管理方法が多様化し,それとともに水源,送配水および散水施設も変化している。また,ダム,ため池等閉鎖性水域の水源では富栄養化が依然進行しており,水環境の保全は,農村環境の保全や水資源の有効利用の面からも重要な課題となっている。本報では,農業用水質基準が策定された経緯を振り返り,今後の農業農村において要求される農業用水の水質保全のあり方を考えるためのいくつかの課題を提示した。