阿蘇地域の牧野は古くから牛馬の放牧や飼料用の草刈り場として利用されてきたが,粗放的な利用に留まっていたため,森林農地整備センターは国の農業政策に基づき,阿蘇地域を国の重要な畜産基地として畜産農家の経営規模の拡大と経営の体質強化を図り,肉用牛生産の低コスト化,畜産物の生産の安定供給と農業所得の増大を目的として,阿蘇郡旧12カ町村にまたがる約9,300haの広大な原野を開発整備し,主に肉用牛の飼養のための共同利用牧場の建設を行うとともに基幹農道の整備を行った。本報では,事業により開発整備した草地の有効利用,新たな低コスト肉用牛の生産技術,草原の維持・再生に向けた新たな取組み,農業用道路の波及効果,およびその後これらの開発をベースに当センターが実施した特定中山間保全整備事業が地域振興に果たしている役割について報告する。